紙戸屋・中野表具店さんにお伺いしました
●町のふすま屋さんは奥が深い
紙戸屋・中野表具店は三代続く、大阪下町「城東区・野江」にある家族経営の小さな表具店。野江水神社の東の静かな住宅地に店舗がある。
表具屋は主に紙を扱うふすま、額、屏風、掛け軸などが扱い商品。主力商品はふすま。しかし、生活様式の変化と生産方法の変更などにより、伝統的な本襖(ふすま)の受注は減る傾向にある。最近ではプロの建築士でもふすまのことを知らない。建築の学校でもふすまのことを一切教えないからだ。(写真は右から中野智佳子さん・中野幸代さん)
新築のマンションなどを除き、襖は完全な受注生産だ。現地で寸法を測る。ふすま骨を作ってから現地で寸法を合わせる。さらに、下地から上張りまで8工程から11工程を経て「ふすま引手」と「ふすまフチ」を取り付けて、現地で最終の調整を行ってはじめて納品となる。
● ふすまのプロとして丁寧な説明を始める
襖作りは分業制で、骨師、縁屋、引手屋、表具屋がそれぞれの分担を受け持つ。
ふすま骨の種類だけでも大きく分けて4種類。用途に合わせ、最適なものを選ぶ。下張りは建物の基礎工事と同じで襖の強度と持ちを左右する重要な工程でありながら、完成すると外からは見えない。主な工程だけでも、骨しばり、打ち付け張り、蓑張り(2回以上)、ベタ張り(蓑押さえ)、袋張り(浮け張り)2回、上張りとある。特に、蓑張りは古い大福帳などの墨で書かれた和紙を使う。墨には防虫効果があるといわれるからだ。
さらに、引手にも無数の種類がある。大量生産のスチール製だと1個110円、職人の手作りで漆塗りだと1個13,000円。その開きは120倍以上。完全手作りだと50,000円以上のものもある。
見栄えの決め手は上張り。機械漉きの紙の場合、半年日光に当っただけで変色してしまう。手漉きの紙では同じ条件でもほとんど変色がない。その上、丈夫だ。「襖はすぐに破れる」と言うのは安物の襖の話。上張りの紙にも無数の種類がある。
それに加えて、ふすまフチの種類は大きく分けると3種類だが、素材やデザインでさらに細かく分かれる。
マンションの場合、骨が発泡スチロールやダンボールが多い。基本的には使い捨ての襖骨となる。張替が出来ない事もないが、張り替えし乾燥後、紙が縮むと襖が紙に引っ張られて反り返って動かなくなったりする。 障子に関しては「アイロンで接着する障子紙」を使用すると、アクリル接着(ボンド止め同様)となり、紙が剥がれずらく張替えが困難となる上、障子桟が痛む。
●ホームページを立ち上げたら全国から注文がきた
ホームページを作ってから全国から問い合わせが来るようになった。施主さんがホームページを見て直接発注してくるケースが一番多い。こだわりを持っている方が多く、一つだけの和室を大切にしたい。自然素材にこだわりたい。などの理由で新築の家の襖を入れ替えることもある。
● さらなる飛躍をめざす
紙戸屋・中野表具店の強みは、丁寧な説明とデザインから施工まで責任を持って行うことだ。職人気質の店主が品質にこだわり、染師の中野幸代さんと意匠・型紙作成の中野智佳子さんが、店主を支えている。
フローリングに合うふすまや洋室にマッチするおしゃれな掛け軸を日々開発している。さらに、着物をふすまやオリジナル額にリメイクするなど新しいことに挑戦している。
こちらが紙戸屋・中野表具店さんの公式ホームページです。
(文責:長渡)