お寺さんの話
【仁王の話】
寺の表門の左右に金剛力士の安置されているものがありますが、これを「仁王門」と呼びます。金剛力士のかわりに四天王のうちの持国天と増長天が安置されているときは、これを「二天門」と呼びます。仁王も二天も仏を安置する浄域を警備するガードマンなのです。
金剛力士というのは、金剛杵を手にもって、その威力で仏法を守護する神で、単独で武装した形であらわされる時には、これを執金剛神と呼び、二分神となって寺門の左右に立って仏法の守護にあたる時に金剛力士と呼びます。「仁王(二王)」というのは、もともとは一体であったものが、左右に配置する必要から二体一対としてつくられ、それを「二王」とよぶようになったようです。
ところで、広い意味の仏像は大きく<如来、菩薩、明王、天、その他>の五つにわけられますが、金剛力士は、帝釈天、弁財天、大黒天、十二神将などと共にこの中の「天」部に属しています。
インドで発生した仏教は、その成立以前からインドで根強く信仰されていたバラモン教やヒンドゥー教の神々を仏教にとり入れて仏法を守護する護法神としました。「天」というのは「神」のことで、インドの「デーヴァ(神)」ということばを、中国で「天」と音訳したものです。
仁王さんは普通、口を開いた阿形(あぎょう)と口を閉じた吽形(うんぎょう)に作られていますが、口を開いて最初にでる音が「あ」、口を閉じて最後に発する音が「うん」で、ものごとの最初と最後を意味するものとされています。また、密教では言葉に宿る力を大切にしていますから、「あ」を万物の根元、「うん」を一切が帰着する智徳ともしています。
■ 狂 言 「仁 王」
ある男が、金に窮したバクチ打を仁王にしたてて、まんまとさい銭を得ます。しかし、仁王にふれると動くのを不思議に思った参詣人にくすぐられ、バクチ打が笑いだしてばれてしまうというユーモラスな狂言。
兵庫県加東市 高野山真言宗 光明寺 執行(しぎょう) 星谷快明